昨年の夏のことである。8月に一人暮らしの父が倒れた。
お盆に家族が集まる日、お寿司屋を予約して孫と会えるのを楽しみにしていた父。その日、実家でぐったり寝込んでいる父を発見した。顔がいつになく腫れていたので脳梗塞を予感してすぐに救急病院に連れて行った。CT検査の結果では脳に異常はなく、緊急手術の必要はないが検査を兼ねて入院をすることになった。言語がはっきりせず、自分で体を動かせない状態で検査と治療を繰り返す日々に入った。
翌週末に息子達は、まず実家に集まり父の加入する生命保険、損害保険、年金や日々の家計をチェックした。入院で請求できる保険に頭がいっていた。生命保険の入院特約の有無をみて、入院で請求できる特約もなく、請求できるものがないことを確認し、入院費用は父の年金や息子達が補填することにすることを兄弟で確認した。死亡保障も古い保険だったので、あと3年で終了してしまうものだった。
ひと月後少しずつ意識を取り戻し、会話ができるようになった父でしたが、右腕と両下肢(両足)に力が入らない。医師からは後遺障害として残ることにより、介護認定の申請、身体障害者申請に取り掛かること、退院後の生活の姿を考えておくよう告知を受けた。
慌しく息子としてできる課題をこなして、介護認定4級、身体障害1級の認定を受けた。退院後に受け入れてくれる施設探しも難航した。複雑で不慣れな介護保険制度と健康保険制度の理解に努め、いくつもの施設に断られながらも時間を作っては1件、1件訪問し、やっと受け入れてくれる施設と出会うことができた。
この時点では既に民間保険の請求は頭にはなく、正直、あと3年の保険期間中に父が他界した場合に請求するための保険との認識しかなかった。
ところが、ある日保険会社から年1回送られてくる「加入保険のお知らせ」を見た兄がみつけた一文。
「死亡・重度障害保険金」
そう、死亡と同等の状態になった際に生前請求できる障害保険金である。「入院によって請求できるもの」との思いが強かったので、高度後遺障害で請求できる保障のことは思いもしなかった。
早速、介護認定、身体障害認定で取り付けた医師所見と保険約款を注意して読むとまさに該当しそうである。すぐに保険会社に連絡をして保険金請求書を取り付ける。ここは慎重に医師に記入してもらう診断書に、先の認定を申請する際に記載していただいた所見と同じ表現を使っていただくよう依頼書を工夫し書類を完成させた。記載事項、内容がちょっと違うだけで、これを理由に保険不払いになるトラブルを避けたかったのである。
おかげで無事重度障害保険金を受け取ることができた。今後父の生活において、どのような支出を伴うのか不安だったので、まとまったお金の準備は心強いものになった。
保険は自ら請求しないと保険金は受け取れないルールは社会保険、民間保険共通の制度。きっと今回のケースのように入院をした際に保険会社に問い合わせをして入院に関する請求の確認で終わってしまって、その後、症状や状況に変化が起こったあとに保険請求が可能か否かを確認せず請求漏れに至っている契約が少なくはないと思う。
どうしたら自らの状況が保険請求に該当するのか、どうしたら気軽に聞ける仕組みができるのだろう。どうしたら保険担当者が顧客の状況に目を向け、タイムリーで的確な助言ができるような仕組みを構築するか、乗り越えるべき課題がまたひとつ明らかになった。
(法人コンサルティング部 吉田)






