日本は世界的に見ればまだまだ安全な国のようですが、それでも物騒なニュース
を見聞きしない日はありません。
泥棒に侵入され、物を盗られるだけならまだしも、身体に危害を加えられたり、
はたまた乱暴な運転をする他人の車によって交通事故に巻き込まれたり、通り魔
のような理不尽な暴力にさらされたりなど、一昔前なら一生縁のない事柄だと思
われていたのに、残念ながら今の世の中、他人事ではありません。
保険商品も、どちらかと言うと、自らが他人に対して迷惑をかけた時(加害
者になった時)のために備えるものが多く、自らが「被害者」になってしまうこと
を想定しているものは、あまりありませんでした。
「加害者」になってしまった時の保険の代表が、自動車保険の「対人賠償」であ
り、「対物賠償」です。
他人の身体を傷つけたり、他人のものを壊したり、というのは、あらかじめその弁
償すべき金額の大きさがわからないため、「少ない掛け金で大きな補償」という
「保険」で備えをするのがふさわしいリスクと言えます。
一方で、「被害者」になった時の保険はと言うと、確かに「火災保険」や自動車
保険の「車両保険」、「傷害保険」など、自らの財産や身体を守るための保険が昔
から存在しました。
ただ、これは他人の過失(うっかり)や加害行為によって、自らの財産、身体を傷
つけられた場合も対象になりますが、このほかにも自然災害や不可抗力、自分の過
失(うっかり)を原因とした損害の補償まで含まれており、「被害事故」にのみ焦
点を当てているわけではありません。
例えば、自分が車の運転を誤り人をはねてしまった場合、自動車保険の「対人賠
償」からは、おおよそ次のような「賠償」をしていくことになります。
まずはケガを治すための治療費、精神的なショックを与えてしまったことによる
慰謝料、働いている人が治療のために仕事を休んだのなら休業補償も賠償項目に加
わります。
逆に自分が車にはねられた場合はどうでしょうか?
相手の自動車保険から同じように治療費や慰謝料、休業補償が出てくればいいの
ですが、
もし相手が保険に入っていなかったら・・・?
あるいはひき逃げで相手が分からない状況だったら・・・?
仮に自分で傷害保険や医療保険に入っていたとしても、こうした傷害保険、医療
保険というのは「入院を1日すると、いくら」というように金額が決まっていて、
万が一高額な治療費がかかるケースなどでは、その実額が補償されないということ
も起こりうるわけです。
他人さまに迷惑をかけた時の補償はしっかりケアできるのに、逆の立場になった
場合のケアはどうしたらいいのか・・・?
この回答として今ではすっかりポピュラーになった自動車保険の「人身傷害」の
補償があります。
これは自分が自動車事故の被害者になった時に「対人賠償」のように補償してく
れます。個人の方がこの補償に加入すると一般的には、歩行中の自動車事故まで対
象となり、しかも同居の親族全員が補償されます。
保険会社によっては、最近急増している、歩行中に自転車にぶつけられた場合な
ども補償対象に加えているケースがあります。
交通事故の被害者になった場合に備える補償として、自動車保険の「人身傷害」
は非常に優れた保険と言えます。
ただし難点がひとつ。
「人身傷害」の補償は自動車保険の補償項目のひとつであり、車を持っているか、
少なくとも自動車運転免許を持っていないと(※)、この補償を得ることができな
いのです。
(※車を所有していないが運転する人のための「ドライバー保険」に人身傷害の補
償を付けられる保険会社があります。)
また、「被害者」になるケースは交通事故ばかりではありません。
犯罪に巻き込まれる場合もあるでしょう。こんなケースに備えて、保険会社によ
っては、「傷害保険」に「被害事故補償」という特約などを設けるようになってき
ました。
先ほどの「人身傷害」の幅が広くなったと言っていいでしょう。
ここで注意が必要なのが、その内容が保険会社によって異なることです。
概ね「犯罪」や「ひき逃げ」による被害を対象とし、治療費、慰謝料、休業補償
などが保険から支払われるのですが、ある保険会社はその被害状態を「死亡もしく
は所定の重度後遺障害が生じた場合」に限定しており、別の保険会社ではそれに加
えて「ケガ」の場合も含めています。
そもそも、こうした「被害事故補償」というものがあること自体、広く知られて
いるとは言い難いわけですが、その範囲も異なっているとなれば、自らを取り巻く
リスクとそのリスクに対応した保険選びには、プロのアドバイスを受けながら慎重
に決めていきたいものです。
(法人コンサルティング部 小鳥秀明)






