A.時価や新価との差にご注意ください
火災保険には保険をかけるものの価値の分だけ保険をかけなければならないという原則があります。例えば1,000万円の価値がある家に保険をかける場合、1,000万円で保険をかけなければならないということです。1,000万円以上にかけても1,000万円を超えた分は保険として出ません。
一方1,000万円より少なくかけた場合、その割合で減額されてしまいます(このケースでは500万円の保険をかけた場合、「500万円まで出る」のではなく、「1,000万円なのに半分の保険がかかっている」ということで、保険金は損失額の半分に減額されます)。
また火災保険に限らず保険には「保険で利益を得てはいけない」という原則もあります。つまり保険で補償されるのは、「現状復帰」が原則ということです。一方で「もの」は使っていくことで減価していきます。いわゆる経年減価です。経年減価を勘案した価値が時価です。
そうするとこの2つの原則を充たす保険の掛け方は、保険をつけるものの時価めいっぱいで金額を設定するということになります。ところが保険でいう時価は会計上・税務上の時価とは異なり、定額法の考え方をベースにしています。また使用をしている限りは、その「使用価値(通常30%~50%)」を認めますので、帳簿上価値がなくなっているものでも金額が設定できるケースがまま見受けられます。
帳簿価格で保険をかけた場合、保険上の価値よりも大幅に低い金額になる恐れがあります。この場合、「価値より少なくかかっている」保険になってしまい、事故の際、十分な補償を受けられなくなるのです。
ここまで価値の基準として「時価」を説明してきましたが、保険ではもうひとつの価値基準があります。再取得に必要な金額のことで、時価に対して「新価」と言います。新価基準で保険をかけるメリットは一部損害の際、現状復旧のための適切な修理に要する費用から減額されずに保険を受け取ることができる点です。時価基準だと修理によって、時価相当分よりも価値が上がった分があるとして、その分が減額の対象となります。
新価基準で保険をかける際の注意点は「再取得義務」を課せられることです。火災等で損害を被ったものについて、修理による復旧か代わりになるものを購入しなければなりません。すなわち受け取る保険金の使途が限定されるわけです。「再取得」しない場合、新価基準で保険をかけていても、受け取る保険金が時価ベースで算定されてしまいます。また新価基準にする場合、必然的に保険をつける額が大きくなりますので、保険料(掛け金)も時価ベースよりは高くなります。
ご質問の帳簿の金額で保険をつけた場合、「価値より少なくかかっている」だけでなく、その価値基準も時価であるため、いざ保険金を受け取る際にイメージしていたよりも減額される可能性が高いことに留意しておくべきでしょう。